-
2021.11.09 掲載
-
山本容子／ピアニスト・ピアノ講師
山本さんは20代からプロミュージシャンとしてホテルやライブハウスで活躍し、講師としても実績を積んできました。ピアノと向き合うことは暮らしの習慣の一つという「ピアノ人生」を送ってきた山本さんに、演奏に込める思いや、ピアノを長く続けるコツについてお話をうかがいました。
多くの人に愛され、喜ばれる演奏を。「私の体は、このくらいまでピアノが占めています」とあごの下に手をやって笑う山本さん。体の半分以上がピアノ。ピアノと向き合うことは「ごはんを食べるようなもの」と語るほど、これまでの人生をピアノとともに歩んできました。演奏するときは、聞く人にとっての癒しになるようにと、多くの人に愛され、喜ばれる音楽を選びます。自宅教室のサロンで開くコンサートでは、クラシック音楽をジャズ風にアレンジするなど耳馴染みのよい曲を通して、「お年寄りやお母さん方にほっこりしてもらいたい」と語ります。一方で、ご自身がその時々で課題として取り組んでいる、リズムやコードなどが「凝った音楽」はライブハウスで披露。演奏場所に合わせて内容を変え、そこに集まる人に楽しんでもらいたいと考えています。聞く人のことを思い、ジャンルにもこだわらない。柔軟な姿勢で演奏活動を続ける山本さんですが、ご自身のピアノの音色の持ち味は変わらないよう、大切にしているといいます。「『クラシックが基礎にある、やわらかくて優しい音』と言っていただくことが多いです。いろんなジャンルを演奏していると基礎が崩れがちですが、この音は自分の根本にあるものだから、残しておきたいと思っています」
長く続けるコツは、バランスを取ること。これまでピアノをやめようと思ったことはなかったのでしょうか？ 山本さんにうかがうと、「ないです、これしかできないから（笑）」という答えが返ってきました。ただ、力の入れ方は状況に合わせて変わるといいます。「例えばライブの前はピアノに力を注ぐ。ライブが終わったらピアノ以外の好きなこともする。のめり込み続けるのはしんどいですから、頑張り具合を調整するんです。子育てで手一杯のころもやめてしまわずに、ほんの少しずつでしたがピアノは続けていました。私の場合はピアノで生計を立てていたから頑張れたこともありますが、長く続けるコツは、うまくバランスを取ることかもしれないですね」さまざまな先生との出会いも、山本さんの励みになってきました。音楽理論のレッスンで教わった内容は、今でも時々見直して復習する、大切な財産。また忙しい毎日を送るなか、ご自身の演奏に迷いを感じたときは「つきあいの長い先生に聞いてもらって、『大丈夫、絶好調ですよ』と言われると不安が解消される」といいます。山本さんにとって、顔なじみの先生はコーチのような存在として、ピアノを弾く上での精神的な支えになっています。
新しいことに挑戦しながら、これからも「ピアノ人生」今、山本さんが興味があるのはラテン音楽。ベーシストにラテンならではのリズムを教わりながら取り組んでいます。「よく採譜できたなと思うくらい複雑な譜面をもとに、苦労して弾く。すると仕事でラテンの曲が出てきたとき、以前より良く弾けてるんですよ」と笑顔で語ります。練習自体は地味だけど、成果は後に出るもの。「コツコツとやるからこそ、楽しい」という山本さん。「つい好みの曲ばかり演奏しがちですが、知らない、できないからと怖がらずに、共演者さんなどからいろんなジャンルの曲を提案してもらって演奏していきたいと思います」長いキャリアで培ってきたスタイルに満足することなく、新しいものを受け入れて挑戦する。そんな姿勢が、山本さんのピアノに多くの人が魅了され続ける理由かもしれません。「指さえ動けば、これからも弾いていきます。人と比べることなく、歳を重ねたなりのやり方でいきたい。10年、20年経ってもピアノとともに暮らしていると思います。ピアノ人生です」取材・文／かわださやか（取材当時2021年7月）
山本容子（やまもとようこ）
ヤマハ・ネム音楽院卒業後、阪神間のホテル＆ライブハウスで活躍中。30年の実績から、2012年2月まで18年間にわたり旧甲陽音楽学院の講師を勤める。「一人でも多くの方に愛され、喜ばれる演奏を」という思いから、ジャンルにとらわれず、女性らしく、聞く人にとっての癒しになる音楽を追求。現在、自宅教室にて若手ミュージシャンの指導にあたる他、「NPO step by step」の音楽活動にも力を入れる。また近年は絵本などに曲をつける作曲活動、子どもから大人まで楽しめるイベント活動にも勢力的に取り組む。ジャズピアニスト藤井英一氏、大森一宏氏、元バークリー音楽大学准教授・竹中真氏に師事。
Tea For Two音楽教室
Tea For Two音楽教室
https://www.teafortwo.me/
