interview

2021.07.21 掲載

伊波大輔/ジャズドラマー

15歳からドラムを始め、現在ジャズドラマーとして、また講師としても活躍中の伊波さん。好きな音楽を仕事に選び、音楽とともに生きるなかで、あらためて感じるドラムのおもしろさ、ジャズの魅力とは? ジャズドラマーの伊波さんにお話をうかがいました。

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ロックから転向したジャズの魅力。
中学校の文化祭をきっかけにドラムを始めた伊波さん。大学ではオリジナルロックのバンドで活動し、大学卒業後、あらためて音楽専門学校に入学しました。ここでジャズの魅力に心惹かれるようになり、ロックからジャズに転向します。
「大きな音で演奏するロックと違い、ジャズは繊細な音やブラシの技術も必要です。またロックバンドではドラムパートを作り込んで本番にのぞんでいましたが、ジャズでは即興性が重視されます。ずいぶん勝手が違いました」
当時はジャズの有名な曲もほとんど知らなかったという伊波さんですが、勢力的に学び、同校を主席で卒業しました。
「ジャズの魅力は、幅広いサウンドやアプローチを受け入れてくれる包容力にあると思います。一口にジャズと言っても、退廃的でちょっと危険な香りのするサウンドもあれば、おしゃれなサウンドもある。またアドリブでは何をやってもいいくらい自由。聞く人も演奏する人も、それぞれが好きな向き合い方ができるのがいいですね」
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ドラムととことん向き合う。
ジャズドラマーの道を歩み始めてから、伊波さんは数多くのステージを経験し、音楽のさらなる高みをめざしてきました。2、3ヶ月に1度のペースで3年間、ドラムのソロライブに挑戦したこともあります。
「自分の可能性を探りたくて始めました。ソロで演奏してみて、手応えがあった一方で、ドラムは共演者がいてこそのドラムだということも再認識しました。やっぱりみんなとチームワークで演奏するのがいいです」
今、伊波さんが気をつけているのは「バランス」。ドラムは音が大きいため、音量調節をしないと、いい演奏であっても共演者や聞いている人には「うるさく感じられてしまう」と言います。
「だからといって、慎重になりすぎては演奏のおもしろみに欠ける。そこで、ドラムが裏方に徹する時、表に出る時、聞いてあげる時、聞いてもらう時。いろんなシーンを作り出し、全体のバランスを取るよう心がけています」
音楽全体の方向性を引っ張ることができるのも、ドラムの醍醐味。そして共演者がいるからこそ、見い出せるおもしろさです。
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音楽を通して幸せになる、という生き方。
ドラムと真摯に向き合う伊波さんですが、一方で、プロミュージシャンになってから大きなプレッシャーを感じてきました。「お金をいただく以上、プロとしてちゃんとしなくては、という思いが強く、ずっと無理をしていました。自分を大きく見せようとしていたのかもしれません。ようやく最近、このままの自分でいいと思えるようになりました」
心境の変化には、子どもさんが生まれて、自分の人生より大事なものができたことも大きく影響しています。「ふっと力が抜けて、人間としてバランスが取れてきたように思うんです。きっと演奏にも反映されているはずです」
今は「売れたい」という気持ちはあまりないという伊波さん。「売れて、顔の見えないたくさんの人のことを考えるより、ライブに来てくれる人やお店さん、共演するメンバーなど、顔が見える人たちを大切にして、一本一本のライブを楽しみたい。また講師としては、生徒さんの気持ちを汲み取って、少しでも音楽活動が豊かになるようにお手伝いしたいです」
ドラムを通して人と出会い、ドラムを通してものを深く考える。そんなご自身の生き方を、伊波さんは気に入っています。
「今は音楽が仕事になりました。仕事は、生き方。音楽という生き方がフィットしている自分は幸せだと思います」
取材・文/かわださやか(取材当時2021年7月)
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伊波大輔(いはだいすけ)

1985年沖縄県生まれ。2008年琉球大学法文学部卒業。2011年甲陽音楽学院卒業。15歳でドラムを始める。大学入学後はオリジナルのロックバンドを結成し、沖縄県内各地のライブハウスで活動。2009年甲陽音楽学院への入学を機に神戸に移住。在学中、その魅力に心惹かれ、次第にジャズへ転向。同校を主席で卒業後、ジャズドラマーとして関西を中心にライブを行うほか、レコーディングなどの活動も行っている。主な参加バンドは「石田ヒロキTrio」「アゼリアジャズオーケストラ」など。

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